2006年5月 2日 (火)

21世紀の新たな金脈 ~排出権取引~

060430_a     ここ何年かNHKの看板番組である「Nスペ」を視聴することが少なくなっていた。 BSで週4~5本放映されている海外ドキュメンタリーシリーズに比べて圧倒的に「つまんね」と感じることが多くなったからで、 見るとしても紀行、環境ものを睡眠導入代わりにする程度だった。

    ただ先週末の「同時3点ドキュメント:煙とカネと沈む島」 は久しぶりに50分が短く感じた。

    このシリーズがその他泡沫ドキュメントより優れている部分はどうやら2つ。3つの視座をもつことで、 安易かつ非生産的な二項対立の図式から逃れることと、3点同時にカメラを回すことによりライブ感が強調され飽きがこない点だろう。 企画自体は誰でも思いつきそうだが、それをできるのは予算と人員を割けるNスペならでは。30分番組を3本凝縮したようなイメージだ。

    今回のテーマは気候変動による地球温暖化。 3点に選ばれたのは温暖化ガスを大量に吐き出す炭鉱都市重慶、温暖化ガス排出権市場で先物取引を行う米ブローカー(@NY)、 そして海水面上昇により水没が近い島嶼国家ツバルだ。

 これまでであれば重慶とツバルの現状を取り上げて、結論は「現状は深刻。 待ったなしの対策が求められる」→ふ~ん。so what? という時間の浪費番組だったはず。 それがNYの企業が登場することで問題の構図を俯瞰しやすいようになっていた。

060430_b わたしがもっとも印象的だったのが排出権のブローカーが言った「良心では人は動かない。 我々の自由市場と資本主義経済だけが温暖化を止め得るのだ」という言葉。いやいやアングロサクソンの傲慢さ、強欲さたるや…。 経済戦争に勝てないわけだ。評価するしないは別としてわれわれにもっとも欠けているロジックだろう。

    番組のラスト、国際会議で基調講演したこのブローカーは 「儲けるか、傍観するかそれはあなたたち次第」とぶち上げる。そこで京都プロトコル、排出権取引の市場について少し調べてみた。

    何と2010年には26兆円に達するとの予想もあるらしい。 「温室効果ガスの排出権取引を巡る議論」 というレポートによれば削減義務の割合(対90年実績比で08年~12年に年平均いくら減らすか)は日本6%、EU8%、アメリカ7%、 カナダ6%、ロシア±0%である。90年時の各国のエネルギー効率からしてバラバラなのだからこの線引きはやや不公平に感じた。 おそらくアメリカに譲歩した結果だろう。それでもなお調印を拒否するアメリカの姿勢は理解しがたいし、 その国に本拠を置くブローカーが巨額の利益を上げるというのも何だかなあと思ってしまう。 国際市場への参加条件に議定書調印を義務付けるとか(これだと自由市場とはいえないか)しないと不公平感はぬぐえない気がする。

    元々省エネに熱心だった日本や欧州諸国にとってはかなり厳しい目標設定と思う。もう極限まで雑巾を絞っている企業も多いだろうし。 中国の政府高官も番組内で語っていたがこれからは、ロシアや中国など削減義務を課されていない(あるいは目標値の小さい) 発展途上国が排出権を輸出するようになるのだろう。

    この分野では当然輸入超過になる日本が利益を上げるとすればやはり省エネ技術の輸出か。番組では日本の商社が重慶の炭鉱を訪れ 「排出されるガスを減らすお手伝いをしましょう。減らせば減らした分だけ先進国の企業に売れますよ」と商談を持ち込んでいる様子が描かれる。 これならどこへ行っても理解を得られる。優れたビジネスモデルだと思った。

 

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2006年4月 3日 (月)

ウーゴ・チャベスという男(漢?)

先月中旬にBS1で放送された「世界潮流 〝イラク〟は世界をどう変えたのか」を見た。

内容は2部構成の討論番組。
前半は宗派間の対立、クルド人問題など激変する現在のイラク情勢とその影響について。 イラク議会選挙でシーア派がマジョリティとなったことにより中東各国に地殻変動が起こっている。

スンニ派の王家による支配が続いていたバーレーンやサウジアラビアなどでは虐げられてきたシーア派の住民たちが公然と反政府運動を行い始めたという。 その動きを支持し地域への影響力拡大をはかる大国イラン…。国境を越えて宗教を軸とする横のつながりが広がろうとしているというもの。

後半は米国内で進むイラク攻撃批判の動きと、米国の〝裏庭〟 だった中南米で広がる反アメリカの動きそしてカスピ海の天然資源を巡るエネルギー争奪戦について。

Chavez2006011401_2 ベネズエラのチャベス大統領は昨年11月、 FTA導入を話し合う米州サミットに出席した際に同時に行われていた市民集会に参加し、反ブッシュのシュプレヒコールを上げた。

日本の常識ではおよそ考えにくい行動である。この男に興味が沸いたのでググってみた。 国際情勢解説サイトのアジアの声にその名もチャベス・ ウォッチといコーナーがあり、 そこにチャベスの最新の言動がアップデートされていた。 

2006年2月17日、チャベス大統領は、 アメリカのベネズエラ批判が一線を越えるようなら、同国への原油供給を停止すると警告した。アメリカは輸入エネルギーの15% をベネズエラに依存している。前日、ライス米国務長官が、チャベス政権に反対する運動を展開することによって、 チャベス大統領の影響力を弱めたいと発言していた。

2006年2月24日、チャベス大統領は、 アメリカの航空会社のベネズエラへの乗り入れを制限すると語った。

おいおい…。ますます反米的な態度を強めているじゃないか。

今や中南米をまとめうるカリスマ(ゲバラの肖像をバックに演説する姿は心を動かすものがあった) となったチャベスさんは他地域での味方作りにも積極的だ。

2006年2月8日、チャベス政権のラミレス・エネルギー石油大臣は、「2006年は、 中国に対する原油の輸出量を3倍にする」と述べた。これにより、1日あたりの原油輸出量を30万バレルに拡大する。

敵の敵は味方とでも言おうか。今度はロシアあたりかな。
積極的に資源外交を展開するチャベスの狙いについては田中宇さんの「
石油で世界を多極化する南米のチャベス」が説得力があった。

チャベスは、中南米諸国の統合を強めてアメリカの支配から独立に導こうとする構想を持ち、 それを19世紀に中南米をスペインから独立させた英雄シモン・ボリバルにちなんで「ボリバル主義」と呼んでいる。 中南米諸国に石油を安く売る戦略は、ボリバル主義の一環である。チャベスの考え方には、キューバ、ブラジル、アルゼンチン、 ウルグアイといった国々の指導者が賛意を表明している。これらの国々は、先日の米州サミットで、 アメリカ主導の自由貿易圏構想FTAAに反対した。

たしかに米国を排してのマルチラテラルな枠組み作りが彼の究極の目標とすれば、 一連の言動にも素直に納得がいく。
それがあながち夢物語とも思えないほど、 現在の国際社会において戦略資源としての石油や天然ガスなどの価値は高まっているということなのだろうと思った。

  

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