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2006年6月 9日 (金)

ココシリ体験

久しぶりに、本当に力のある映画を見た気がした。

もちろん「ダ・ヴィンチ」じゃあない。あれも確かに力の〝入っている〟映画ではあるんだろうけど、無宗教の当方にとっては眠いだけ。 つまりは頭を空っぽにしてひたすらオドレイ・トトゥの鑑賞に徹していた(美しい。いるだけで画面が〝もつ〟女優さんになったんだなあ…)。

Photo03 それはともかく力のある映画。 シャンテシネで「ココシリ」を見た。
毛皮狙いの密猟による乱獲で絶滅の危機に瀕しているチベットレイヨウを守るため、 海抜4700㍍で延々密猟者を追いかける私設警備隊を描いた作品だ。

まず映像に力がある。
現地で半年にわたる長期ロケを敢行、撮影されたありのままのチベットの風景はひたすら澄み切って美しい。見ていて、 以前真冬の湖水地方を旅したときのことを思い出した。オフシーズンのため見渡す限り無人の荒野。(チベットとは比較にならないけど) 射すような冷たい空気に晒されながら、圧倒的な寂寥感にふるえた。この映画もそう。誰に対しても平等にふるまい、 そして牙をむく自然を一切のムダを排した映像で端的に捉えてみせる。

俳優(もしくは演出)に力がある。
Working Title」 さんの記事によればほとんどが素人とか。それにしては緊迫感とリアリティが完ぺきに調和していた。 というかあれほどの過酷な環境に放り出されればプロも素人も関係ないのかも。 雪中に置き去りにされる役柄ながら化粧ひとつ崩れなかったホワイトアウトの松嶋菜々子とはエラい違いだ。 この監督は撮影に先立って1年現地に滞在し、住民との信頼関係構築に務めたというが、その熱意が見事に実を結んだ。

そして物語に力がある。
単純な善悪二元論ではない。パトロール隊は押収した毛皮を売りさばいて活動資金に充てるし、(当然逮捕権はあるのだろうが) 拷問もいとわない。そして何より「お前は人間よりカモシカのほうが大事なのか」という密猟者のリーダーの言葉が強烈に響く。 砂漠化によって牧草地が消え、生きる術を失った人々はやむなく密猟に手を染める。 そして自らの文化やアイデンティティの象徴ともいえるものを破壊してしまうのだ。

まるで沖縄みたい。

環境は重要だし自然保護が正しいのは誰でも知っている。けど「オレらが食えなきゃしょうがない」のもまた確か。 グローバリズムや資本原理主義、そしてそれらに抗おうとする人々が陥りやすい罠が見事に表現されていたと思う。

文句なしの傑作だ。

ただ平日の午後だったにしても、お客はジっちゃん主体で2割程度。しんどいからあんまり込んでるのも困るけど、 宣伝とかもうちょっとうまくできなかったものか。 ソニーピクチャーズもあんましカネかけられないのかもしれないがこれほどの作品だけにもったいない気がしたのだった。

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